筆者らは現在までに，グロースキャビネット内での葉状および樹枝状地衣の栽培を試みている（Bando＆Sugino 1995a, b , 坂東・杉野1996）．以下にその手順を紹介する（図1）．
１．葉状地衣体辺縁または樹枝状地衣体先端を切り出す・
２．無蓋ペトリ皿に敷かれた濾紙上に置く．
３．ペトリ皿ごと無色透明のポリエチレン袋に入れる．このとき袋には水の入ったビーカーも入れ，袋内の相対湿度を100％にする．
４．袋を膨らませて密閉する．これは袋の内壁についた水滴が地衣体に落ちてコンタミを起こさないようにするためである．
５．この袋を20℃，3100ルックス，1日16時間照明のグロースキャビネット内に置く．
６．4日毎に90分間地衣体をボールド基本培地（Deason＆Bold 1960）の100倍希釈液（1/100-BBM）に浸漬する．
以上の方法により筆者らはウメノキゴケ（Parmotrema tinctorum）やマツゲゴケ（Rimelia clavulifera）などの葉状地衣体の面積を24日間に30％以上増大させることや，トゲシバリ（Cladia aggregata）やアカサルオガセ（Usnea rubrotincta）などの樹枝状地衣体の体長を2～3mm伸ばすことに成功した．なお，栽培中に生長速度が鈍ったときには，低湿処理をすると回復す るものもある．詳しくは，以下の文献を参考にして項きたい．
引用文献
Bando，M．＆ Sugino，M. 1995a. Cultivation of the lichen Parmotrema tinctorum in growth cabinets. J. Plant Res. 108: 53-57.
Bando, M. ＆ Sugino, M. 1995b. Effect of low humidity treatment on growth of the lichen Parmotrema tincutorum in agrowth cabinet. J. Plant Res. 108: 527-529.
坂東誠・彬野守．1996．グロースキャビネット内で栽培した地衣類の成長．日本植物学会第60回大会（福岡）研究発表記録，p.96.
Deason, T. R.＆Bold, H. C. 1960. Physiological studies.I. Exploratory studies of Texans soil algae. Univ. of Texas, Austin, Publication no. 6022, pp. 70.
